家族に愛されて来た古民家を、あたたかさ、明るさ、使いやすさを求める方向で改修。この家の格式や立派さに見合った改修となるよう、力を尽くした。年老いた母と、ここで会社を自営する息子との二人住まい。
シバザクラが満開の、再生後の北側外観。
再生前の姿。鴨居上の欄間に障子が入り、天井までの小壁が高いことが、この家の格式をうかがわせる。神棚も仏壇もとても大事にされている。
何を引き継ぎ、何をなくすのかをまず、整理した。
家を軸組と屋根だけにまでほぐし、軸組全体を揚げ屋をする。もともとあった家は、基礎の立ち上がりのない石場建てだったから、揚屋(あげや)が可能だった。
取り替えるべき柱、新設する柱を取り付け、建築基準法が求める鉄筋コンクリートの基礎を作った上に、建て屋をおろす。
蔵と母屋をつなぐ建物を新設し、外側に回廊を作った。ガラスブロックには、夜になると明かりが灯る。
回廊から庭と北側に新設した玄関を望む。右側の円弧の弦の形をした建物は、新しく作った事務所棟のトイレ。腰から下にはめこまれたこのガラスブロックも、夜は行灯の役目と果たす。
かつては縁側だったところにできた玄関ホール。あがったところが、畳の小上がりになっているのが、ほっとする。土間部分には臼を利用したテーブルを置いた。
玄関からあがった正面の引き違いのガラス戸を開けると、テラコッタ張りの薪ストーブスペースと、板の間の応接間がある。ガラス瓦の利用、小壁を取り払ってガラス壁に変えたことなどで、高いところからの採光を実現した。ご先祖たちの絵姿が、高いところから見守っている。
母親がいつも居る、明るいLDK。左手に掃き出しのガラス窓があり、そのままウッドデッキに出ることができる。
母屋の西側の3分の1ほどは、息子の会社の事務スペースと打合せスペースになった。
新築したガレージは、2箇所のフルオープンする2枚引き戸で、車などを格納する。
蔵と繋いだアプローチに屋根をかけ、表庭にでる扉が、勝手口とつながり、水回りを挟んで主屋とつながる。
玄関内部のかつての牛梁のめぐるホール階段の手前は、和紙ばりの扉のうらがコートかけ。
新旧では、エントランスとアプローチが、ガラッと替わった。車は真ん中から、人は蔵の西側の新設屋根つき側廊を通り北側から入る。